ふとした時に気になったことがあります。
“林”と“森”ってどの様な時に使い分けるのか。
実はこの二つの厳密な定義や違いって知りませんよね。
なので今回は林と森の定義について調べてみました。
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一般的なイメージ
多くの方は林と森の違いは“木の量”だと思っているのではないでしょうか。
木がある程度集まると林、更に多くなると森になるといったイメージだと思います。
要するに、漢字の通り“木<林<森”の順に木の本数が増えていって、言い方も変わっていくといった考え方ですね。
では、本当にそのイメージが正しいのか。
正しいとすれば林と森の境目はどこか、定義はなんなのか。
ということが気になりますよね。
いくつかの視点で調べてみたました。
広辞苑で調べた林と森の意味
林と森の違いについて、言葉として違いがあるのか広辞苑で調べてみました。
私の持っている広辞苑は第4版で少し古いのですが、お許しください。
【林】(「生(はやし)」の意)①樹木の群がり生えた所。(後略)
【森・杜】①樹木が茂り立つ所。(中略)②特に、神社のある地の木立(こだち)。(後略)
林と森の意味を、今回の話題に関係がありそうなところだけ引用しました。
それぞれを見比べてみてどうでしょうか。
パッと見はあまり違いがなさそうですよね。
どちらも木が多く生えている場所に対して使う言葉の様です。
日本語の意味では厳密な定義や違いはなさそうです。
しかし、森の意味の方に気になる記述がありました。
“神社のある地の木立”という文言です。
この文言が、後述の“森林管理局のQ&A”の内容とつながる部分があります。
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森林管理局のQ&A
近畿中国森林管理局の滋賀森林管理署のQ&Aページに、面白い質問とそれに対する回答が載っていました。(2018年6月7日追記:↑↑ページが削除されてしまったようです。)
その質問とは“木がどれくらいあったら「林」で、どれくらいあったら「森」なのですか。”といったものです。
まさに今知りたいことですね。
質問に対しての滋賀森林管理署の回答は以下の通りです。
- 「森」も「林」も樹木の集まりを表すことばです。昔は区別して使っていましたが、今でははっきりとは区別できません。ただ、「鎮守(ちんじゅ)の森」のように、大きな木があって、身が引き締まるような思いがする場合やおごそかな雰囲気がある場合には「森」というようです。これに「松林」とか「竹林(ちくりん)」という言葉を対比させてみると、「森」と「林」の違いが理解していただけるでしょうか。
- 「もり」は神が宿る場所でした。カムナビという言葉があります。神が鎮座する山という意味です。有名な「カムナビ」は奈良の三輪山ですが、この山は「みもろ」という別名があります。「もろ」とか「もり」ということばには神が宿るという元々の意味があって、大きな木が鬱蒼(うっそう)と茂っている場所には神が宿ると昔の人は考え、「もり」とよぶようになったのでしょう。
- そういう意味から、「林の中に森あり」という古い言葉の意味も理解していただけると思いますし、また、本数の多少にかかわりなく、たとえ木が一本の森があっても不思議ではないわけです。
- 平安時代に書かれた「枕草子(まくらのそうし)」という有名な随筆があります。この中に次のようなくだりがあります。「よこたての森といふが耳とまるこそあやしけれ。森などいふべくもあらず、ただ一木あるを、なにごとにつけけむ」つまり、作者の清少納言(せいしょうなごん)は、木が一本しかないのに森というのはおかしいと、現代の感覚に通じる考えをしていますが、木一本の森が確かに存在していたことがわかります。「よこたての森」は、現在の京都府相楽郡木津町にありました。
- 実は、木が一本しかないのに「森」とよばれているところが今もあります。山口県豊浦町の「川棚のクスの森」で、枝張り東西46.5メートル、南北49メートルという確かに巨大なクスノキですが、一本で「森」とよばれています。
滋賀森林管理署の回答をざっくりまとめると、
- 林と森の違いは今は厳密には定義されていない。
- しかし、神聖な場所・おごそかな場所は「森」ということがある。
- たとえ木が一本しかない場所でも「森」と呼ぶことはある。
- 清少納言も「枕草子」で木が一本の場所を森というのはおかしいと書いている。
といった内容です。
この回答を信じるのであれば、はるか昔から“森”という言葉の定義に疑問を持つ人がいたということですね。
なので、“林”と“森”の定義や違いを突き詰めるとなると、ひらがなができた時代まで遡らないと分からないのかもしれません。
ただ、“森”の概念について、広辞苑と滋賀森林管理署の回答で一致する部分もありましたね。
双方を踏まえて考えると、木が生えているおごそかな場所や神聖な場所のことは“森”と言ってもいいのかもしれません。
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まとめ・感想
滋賀森林管理署の言う通り、現代において林と森に正確な定義はなく、木の量によって言い換えているわけではないのかもしれません。
強いて違いを言うのであれば木が生えているおごそかな場所は“森”という言葉を使って表すということですかね。
しかし、かの清少納言まで森の定義について頭を悩ませていたのは意外でしたね。
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